· 

キノコ、ニョコニョコ

「え、100枚?」

春も遠くないと思わせる朝の光の中、電話から地区の環境衛生委員の方の声が響く。

この町の生活では、都市ではあまり一般的でない廃棄物が出る。農機具・農業資材や、自動車用品、DIY関連の工具や資材だ。自治体としても、こうした廃棄物を恒常的に処理できるほどの大規模な処理場を持てないので、年に一度そうした対象ごみの収集が自治体とJA(農協)のそれぞれにより実施されるのだが、その廃棄物を引き取ってもらうためのチケットの必要枚数を告げた時、冒頭の発言と相成ったわけだ。

これまで倉庫と納屋を整理して、この収集時期を今か今かと待ち構えていたのだが、先日実施の連絡があり、改めて前の住人が残置した廃棄物をとりまとめ数えてみたら、自治体の収集に出せる物品は正確には92個あったのだ。育苗箱などは必要数をさしひいて180廃棄(15ずつまとめられるので12個という扱い)、空の肥料袋、灌漑用パイプ、ぐちゃぐちゃになったビニールマルチ、農薬の噴霧器。いかに熱心に農業に取り組んでいたかがわかるラインナップ(ちなみに農薬はJAによる収集にて廃棄する予定)。これだけの廃棄物を出すことに心が傷まないわけではない。かと言って、使わ(/え)ないものを廃棄せずに置いておくと、問題の先送りにしかならないのも事実。自分にとっては廃棄物でもったいないとしか感じられないけど、その当時は役に立っていたのだから、と感謝しつつ送り出そう。

そんな廃棄物処理をする一方で、伐採した木材にキノコを植菌。駒菌と呼ばれる、小さな木材のかけらに種菌を繁殖させたものを、適当な大きさに切った木材に穴を開けて、打ち込む。写真材木の黒褐色の木肌にぽつぽつと白く見えるのが駒。こんな風に山でとれた木材をまずはキノコ栽培に使い、その過程で分解された廃材を数年後には肥料にしていく。他にも山で集めた落ち葉を踏み込んで発酵させ、春先の育苗用の熱源に使い、その後、育苗用の土にしていこうと思っている。

こんな風に山や身近で手に入るものを再利用・転換利用して、"廃棄"するものを減らしていきたい。いわば、3R運動に基づく循環農業だ。その先は持続的な社会を構成する農業モデルというのが、今をときめく有機農業・自然農へつながる考え方だ。

だが、、、待てよ、、、。化成肥料を使い、農薬を使い、機械化された農業の結果として、残留肥料が田んぼの底に溜まり青白く異臭を放つ層を作っている現状を見ると適切でなかった農業技術だと生理的に感じてしまうが、戦後日本の人口が増える中でその食を満たすために当時最善の方法として推進された、それ自体は間違っていない。でも今では健康や、持続性がより強く求められる中で技術の転換が必要とされるようになってきたのだ。

価値観とともに、技術も変遷する。だとすると、今の有機・自然農法もまたいつか異なるテーゼに取って代わられる日が来るのではないだろうか? 効率性から持続性・安全性へと農への要請が変わってきた、その次は、、、? そのころには、自分が使っていた農機具も誰かに「もったいないなぁ」と思われながら捨てられていくのかもしれない。