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有機栽培再考

(今日のブログは関連画像がなく、かつ文が長いので、お詫びに鳥が戯れている動画をアップしておきます。)

 少し前のことになるが、有機栽培の研修会に誘われて参加してきた。

 これまでもっぱら書物で有機栽培や、自然栽培の勉強をしてきたが、実はあまり納得できないものが多かったのが事実。そのひとつには前提となる事実やターミノロジーが不明確で具体的に何を言いたいのかわからないところが多かったからだ。それでも自然栽培は、技術というより哲学に近いものが合ったので、それはそれで受け入れてきていた。

 一例を挙げると、連作障害。一般的によく知られているこの現象も、その理由となると土中の肥料のアンバランスであったり、連作することによる加害生物の増加であったり、それぞれが注目する理由のみを取り上げ、それのみへの対処方法が記載されているといった始末。さらには、酵素が植物体に効くなどという文言がよく使用されている文献が多く、一般の人口に膾炙する水素水などと同じくエセ科学という目でしか見ることのできない記述が多い。もし技術的に確立したかったら、曲がりなりにも「科学」の俎上に乗せることのできる言語で説明したらいいのに、、、、と思い続けて早5年。

 そこで、今回の研修会でしたが、比較的「科学」に近い言語を使っていたので、だいぶ頭に入りやすかったし、論理的ではあった。発表の中で一番の発見は、植物はアミノ酸や酢酸などの小分子有機物を直接吸収できるというもの。勉強不足が露見するが、有機肥料も無機質に分解されてから吸収されると思っていたので、これは目からうろこ。 そして、植物体に吸収された後利用される形は有機窒素であるので、無機窒素として吸収されると植物の体内で有機質として再構成するプロセスで多くの炭水化物(構成要素としてと、エネルギーとして)が必要があり、結局同量の窒素が吸収できた場合は、有機肥料のほうが植物体への負担が少なく、結果健康な野菜が育つというロジックでした。

 ちなみに酢酸やクエン酸などの炭水化物も吸収できるようで、これは植物体が光合成で生産する炭水化物に追加的な効果を持つので、果物の糖度をあげたり、植物体の構造を強化したりして、結果病害虫の食害を受けにくくする効果をもたらすとのこと。

 いずれにしても、これらの物質を得るために、堆肥やその他生物由来の物質を細菌等の微生物の作用で分解するというのが有機栽培の施肥のポイントとなるようです。もちろん、分解をいいタイミングで止めるのは難しいし、有機化学の常で反応にはすべて収率というものがあるので、無機肥料に比べて量・タイミング・残存する肥効など、適用には課題も多い。

 ちなみに有機栽培を選択する理由が、そのプロセスではなく、むしろ製品である野菜の品質アップであるのであれば、化成肥料をむやみに忌避するということ自体に疑義が出てくる。 例えば、施肥バランス、pH、植物の体力を擾乱しないようにポイントポイントで化成肥料を使ったり、あるいは、化成肥料を微生物培養に使って有機化してもらい、それを施肥するなんてことも可能だなぁと。

 

 これはこれで学びと示唆の多かった研修なのですが、では有機肥料を買ってきてそれを施肥すれば済むかというとそういうわけでもない。前述の施肥技術上の課題、ロジスティックスの課題(同じだけの窒素分を供給しようとしても有機肥料はかさばるし、重い)、さらに個人的には遠くのエコシステム(例えば、北欧の海草を加工した有機肥料なんてものもある)から持ってきた肥料は、マイレージの観点も含めて、持続可能な農業と言えないのではないかと、納得いかない部分が多い。 やはり有機資材は回りにあるものを使い、それを加工していくことが重要だなぁと思い、改めて自分の持っている技術や資材を見回すと、米ぬか、落ち葉、鶏糞、野菜の残渣、これから出てくるであろう搾油・搾糖のかす、、、。これらの量などを考えると、自分の場合は、ミミズが解じゃないかと思えてきた。持っている資材は炭素系が多いけれども、ミミズなら窒素固定もしてくれるので、カバーできるし、、、、。このあたりだとモグラなどのミミズの天敵も多いと思われるので策を練らなければいけないけれど、久しぶりにミミズコンポストを作り始めようと思った、3月半ば。 今から準備しても、来年用の肥料分ができるかどうかってところですが、まずはサイクルを回してみよう。

 

 もうひとつ、今回の研修で学んだこと。結局いい野菜を作ろうとすると、その野菜の光合成だけでは不十分で有機質を補う必要がある。これはすなわち、他の植物体が光合成して作った有機質を野菜にあげるということである。すなわち、野菜畑は、それ以外に有機質を提供してくれる原野などの緑地がないといい野菜を生産できないことを意味している。講師の方の肌感覚では、耕作地の2倍の面積の緑地が必要ということなので、4人家族の自給自足を支えるために必要な耕作地が6a(畑1a、田5a)であることを考えると、緑地を含めて一人当たり18a/4(=450㎡)の土地が必要となる計算。すべての国土を緑地か農耕地として計算すると最大収容人口は8億5千万人くらい。全員がベジタリアンになって、農民になってなどという仮定はあるものの、日本はまだまだ自給自足ができる人口なんだなぁとちょっと一安心。