一般的に、冬には農家は暇というか、何をしているかわからないという印象が強いのか、「冬は何をやってんですか?」と聞かれることが少なからずある。質問されると心の中では「何を仰るウサギさん」とつぶやきながらも、顔はにこやかに笑いながら「結構いろいろすることあるんですよー」と答えています。実際いろいろあるのです。
この頃の作業は柿酢づくり。昨年初めて作ったのですが、あまりの美味しさに使い切ってしまったので、今年は大幅増量して作っています。このほかにも昨年は味噌やら、醤油やらも試作しているので、そろそろ味見をして、今年の作成方針を立てなくては、、、。というところ。また、今年の実りを保存食品にすべく、いろいろと台所仕事が増える時期です。
もちろん、畑でも作業があります。来年に向けた栽培計画を立てるのはもちろんのこと、その計画実現に向けて畑やその周りの環境を整えるというロジスティクスにとりかかる重要な時期。山から落ち葉など肥料の原料となるものを拾ってきて熟成させたり、畝を整えたり、またもちろん冬に育つものを育てたり、育苗・播種もそれなりにあります。
来年に向けた取り組みの一つとして試行しているのは、田んぼへの「冬季湛水」。冬には田んぼから水を抜いて土を乾かし、余分な有機物を好気的な環境で分解するのが一般的な栽培法ですが、逆に水を張ることでイトミミズやその捕食者の繁殖を促し、その生態系の作用により窒素(肥料)同化や水田雑草の抑制、さらには越冬鳥(マガン、ハクチョウなど)の飛来が期待できるという技術です。実現すると肥料の削減、除草作業の軽減が期待できる一方で、水を常に田んぼに張り続けるというのは立地条件や田んぼの土壌条件が整う必要があります。
ということで、現在作っている二枚の田んぼのうち、川の傍の一枚は潤沢に取水できるのでこれを湛水することにしました。
写真はその田んぼに取水する水路。∫(インテグラル)形をしていて、水路幅5m、直線部分の長さは25m程度でしょうか?写真右下に取水口があります。奥が上流にあたります。
これまでは写真の手前部分に堰を作りそこにたまった水を取水口に導いていたのですが、どうしても右岸側つまり取水口付近に土砂が堆積し埋まりがちになっていたので、意を決して土木作業。秋の冷たい水の中で水路の土砂を整理しました。水の流れに逆らわないよう、なるべく上流側から少しずつ取水口に近づくような水路を掘ります。また、左岸側には大きな岩や石を基盤に埋めて、少々の雨が来ても流されないようにするとともに、これからも時々右岸が雨で表れて大きめの石が出てきたら、左岸にこまめに積むという作業をしたいと思います。そのうち、雑草が生えて土が生まれてより堅固な構造になって欲しいなと思いながら、これって「自然条件に応じて成長するインフラ(いつかコンセプトを整理して書きたいと思います)」じゃないかと思ったり、、、。
ところで、冬季湛水を試行しようと思ったものの、その効果を評価することが結構難しいことに気づいてしまいました。似たような条件の田んぼが二枚あれば比較ができるのですが、現行使っている田んぼだけだと果たして効果があるのかどうかがわからない、、、、。というわけで、今期の試行はとりあえず技術的にプロセスが可能かどうかということを確認するだけに終わりそうです。
評価で思い出しました。今夏やった実験の結果をいくつか出しておきます。
1)トマト畑で実施した投入有機物による耕土層厚の変化に関する実験、、、効果はよくわからず。下が実験栽培後の耕土層の深度測定の結果ですが、むしろ耕土層が固まっているということと、統計上有意な差異が出るほどには計測点を取っていないということがネック。ただ、有機物と黒マルチにより耕土層の減少が鈍る傾向はありそうです。
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2)稲の定植密度による分げつ数、収穫量の変化、、、こちらも稲の品種及びもともとの密度によるとしか言いようのない結果。今の30㎠X15㎠の植え方だと、アキタコマチやハッピーヒル(いずれも品種名)では一本植でも5本植えと大差ない収穫量でしたが、朝紫という品種では明らかに一本植の収穫が少なかったです。これは朝紫の繁殖力がそもそも弱いことにも関係しているのかもしれません。
今年の反省は、「収穫作業に追われてしまい、計測作業がついつい後回しになるので、より緻密な実験計画が求められる」というものでした。ちゃんちゃん。