ホーホケキョ。
いまだに朝起きると霜で畑一面が真っ白に見えるこの集落にもウグイスの鳴き声が響き渡る。
「まずい、、、。」と思わず本音をつぶやいてしまう。冬の間眠っていたように見える草や土が何となく蠢きはじめていたのは気づいていたが、ウグイスまで鳴きはじめると、本格的に農作業の準備を始めなくてはならない。もう少し冬眠していたかったクマの気持ちがよくわかる。
春・夏に向けた準備というと、まずは温床での種まき・育苗。そして、畑の土と畝の準備である。2月から露地に蒔ける種もあるので、まぁ時期的にもそろそろだとは思っていた(が、身体が動かなかった)。 将来的に不耕起としたいのだが、まだまだ土の排水性が高くないので、毎度畝は高めに作る。畝を上げるというよりもむしろ畝間に十分な水の通り道を作って排水性を高める気持ちで掘り進める。トラクターを使うとあまり深くまで掘れないし、畝(間)幅の自由も利かないので、スコップで手掘りである。畝間を掘って、その分畝に積み上げる。ついつい掘ることに夢中になって、40㎝以上掘ってしまう。でも畝も畝間も標準よりも広めなので、畝が乾燥しすぎて困るということはない。ちなみに畝幅や畝間がが広めなのは、実際に作付けをしていく中で、畝の上には作物を2列に植える、片方の畝の作業をするために自分がしゃがんでも後ろの別の畝の作物にお尻や背中が触れないというのが、自分にとって一番快適な作業ができると気づいたからである。
さて、手で掘ると畑の土の構造がよくわかる。掘った断面(写真)を見ると、草が生えている地表から20㎝くらいは有機質を含んだ黒い土、そしてその下には黄土色の層、いわゆる耕盤。長年田んぼとして使われるうちに砂礫が泥の奥に沈んでいき、かつトラクターなどの農機の重みで押し固められたものだ。根っこのしっかりしたいい畑作物を作ろうとするならばこの層をなんとかしないといけない。
耕盤を解消する方法としては2つ。一つが機械的にこの土を崩して、かき混ぜる。だがそのためにはパワーの大きなトラクター(あるいは延々と掘り返してもバテない体力)が必要だ。もう一つが生物の力を借りる方法。
この層の土を掘り上げて観察すると、その中に茶色く細い空洞が走っている(写真)ことに気づく。これは植物の根が土を貫通して伸びて、その後枯れてできたもの。また、時々フトミミズがこの土の層に潜り込んでいることもある。というわけで、上から圧縮せず時間をかけてやれば深く根を伸ばす雑草やミミズが少しずつこの層を柔らかく仕立て直してくれるのだ。
さて、畝間を掘っても苗の植え付けまでには時間があるので、土が崩れて埋まり戻らないように、落ち葉を埋けてさらに落ち葉が風に飛ばされないように笹の枝を押さえで置いておく。落ち葉は近所の県道の側溝に溜まっていたものを集めたもの。笹の枝は、近所からヤギの餌にともらったもの(もちろん、葉っぱはヤギにお召しあがり頂いた)。なんだか近所で手に入れたものを活用しているだけだなあとあきれるが、もしありもの活用選手権が開催されたら地区予選くらいは勝ち抜けるんじゃないだろうか、、、と馬鹿なことは思いながら一人悦に入るのであった。